ご無沙汰してました、中野店スタッフ朝日です。
皆さんは幼い頃、何か悲しいことがあった時、「自分は本当はこの家の子供じゃないのではないだろうか?」「自分は生まれてくるべきだったんだろうか?」「なんで自分はこうなんだろう?」と自問したことはお有りでしょうか。
少しずつ自分の世界が自分のものじゃなかったと疑い始めるような、つらい気分でいたことはあったでしょうか。
そういった感情は感傷として、大抵いつしか忘れ去られるものですが、何となくでも忘れなかった人にものすごく刺さるだろうお話を紹介します。
静かにパーソナルな領域に触れてくるような、秋の夜長に読むにぴったりの漫画です。
カナシカナシカ/紺野キタ
2011年/新書館
主人公・藍はどこかぼんやりして鈍臭い中学生男子。周囲となんとなく折り合いが悪く「鬼っ子」扱いをされている。
そんな主人公の持つ謎の不思議能力は2つあり、まずアンブレイカブル(どんな物理的なダメージも届かない)
そして他人には見えないものが見えたりする。細い路地の向こうにある異世界へ通行できる。
この作品は藍少年の「異世界体験」を通して「身の置き所のなさ」が「少し腑に落ちる」様が絶妙に描かれます。
〜ここから異世界〜
異世界に生きる自分そっくりの、「虫」と呼ばれる生き物たち。本来こうなるはずだった主人公の姿。
実の親である「女王虫」と会う。
異世界に縛られている、本来自分の場所にいるはずだった少女・すずろ。
主人公はある理由でこの異世界から現世に飛ばされて、母親の胎内で死にゆくすずろに替わって産声を上げ、無理やりこの世に生まれてきた。
それゆえ周りや世界と何となく折り合いが悪い。折り合いは悪いけれど、「アンブレイカブル」として世界を超えて庇護されてきたというのが判明します。
やがて、主人公に呼び戻しがかかります。
実の親である女王虫は寿命を迎つつあり、主人公に次代の女王になれと迫ってくる。ヒトとして生まれ、ヒトをやってきた彼を、本来の場所に戻そうとする。
女王虫によって届けられる「蜜玉」。これを食べ続けると女王に変貌するらしく、主人公はひとつ食べてしまう。
女王化はしたくないけれど、自分の影の様にずっと異世界に縛られ続けているすずろを、生まれるはずだった現世へ返したいと願う主人公。
生も感情も喪ってただ在るだけの存在である「すずろ」に、自らの生を明け渡したいと願えども、結局すずろは現世への門をくぐることはできず、主人公が女王虫に変貌することもなく、「然らば」と、藍少年は現実世界に帰されます。
〜ここまで異世界〜
折り合いも急に良くはならず、すべての配置は元あった通りに。
急激な変化もなく、昨日の続きの今日があるだけ。けれど物語が終わりに差し掛かるに連れ、「取り替え子」「鬼っ子」であってもそれなり受容されているーされてゆくことが分かり、何となく明るいものが見える結びへたどり着きます。
藍少年はしかし、このとき垣間見た異世界に2度と行くことはないでしょうし、すずろと会うこともないでしょう。
成長とは根を張ることで、しかし根を張って安定してしまえば世界を渡るような揺らぎはなくなる。
これを読むと自分の揺らぎのことを思い出します。
初めて読んだX年前よりも、今の方が刺さり方が浅い様な気がする。もう、次に自分がここじゃないどこかへ行けるのは死ぬ時だけなんだろうか?
…と、ここまでが本旨でして、コレヨリ述ベルノハ枝葉デスガ、
1.主人公が意志薄弱系三白眼ショタである
2.「蜜玉」により女王と化して異世界で暮らすという甘美なTS要素がある(婿候補の雄まで用意されている)
3.ますむらひろしばりの「立って歩く猫」が異世界への橋渡しをしてくれる
という担当の性癖にクリーンヒットする要素が三つも入っており、甘固くならざるを得ない。
あんまり声高には言いたくないけれど、実はこれが好きなんです。と言ったらこの作品でした。
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