こんばんは。水っぽくて寒い夏でしたが皆様いかがお過ごしでしょうか。
結局僕は大好きな島や温泉に行くこともなく、右手の漫画を左手に持ち替える毎日でございます。
よって、少しでも紙面旅行といいますか、風味のある作品を紹介することで気分だけでも浸れたらな、です。
それでは行きましょう。今回とりあげるのはこちら
悪霊/高寺彰彦/1988,1995,2005
タイトルで内容ほぼ語っているようなもんですが、
「とある一族が権勢をふるう孤島。そこに集まる親族一同。襲い来 る数々の悪霊そして超自然的怪異!限界まで追い詰められた時、主 人公に眠っていた超能力が目覚める!!果たして諸悪の根源とは! 孤島に隠された因果とは!?」というスジ。
物語の構造としては、諸悪の根源が判明するまで、数段階のミスリ ード(こいつが悪霊か?いやこいつか!的な...)あり、 真相に近づくにつれ悪霊に憑依された人間たちが暴れまわり主人公 一行を怖がらせるというつくりになっています。そのため全一巻で すが読みごたえがあるし、物語を推理する感覚も味わえる作品でも あります。なにより絵が緻密で写実的でちゃんと怖い。
諸星大二郎作品でも見たような、海からやってくる亡霊たちとすれ違うじとっとしたシーンなども秀逸です。
水気が多い。
ここまでの画像でお分かりの方もいらっしゃるかと思いますが、こ の高寺彰彦という方、大友克洋のアシスタントを務めていた人で、 フォロワーと言っていいくらい絵が似ているのです。ウィキペディ アによれば童夢の背景を描いていたのもこの人らしいですよって納 得する絵作りです。
童夢であったような人間の心がそのまま超能力として拡大していき 、破壊をもたらすような性向も似ています。ただ童夢は乾いたコン クリートがその舞台でしたが、この『悪霊』は湿気と因縁があから さまにからまる孤島を舞台にしていること、が特徴でしょうか。
最終的に地球エネルギーみたいなスピリチュアルな所にたどり着い てしまっているんで比較すると多少格が落ちてしまう印象も。 手を広げすぎて深度が浅いというか。
な...なんだってー!!
この作品、ホラー側に要素が多くてやや説明調なところも惜しいんです。全一巻なのに4種類の悪役が登場し、それを語るために分量割いているので、そこに居合わせたキャラクターたち の物語がやや薄いことも気になるところです。
虐殺事件にしても直接的な描写は少なく、なんだか「怨」 の蓄積をそこまで感じないのです。やはりそれを描ききるにはもっとページ数が必要だったのではないかと。
ともあれ、それらを補って余りある崩壊する島と屋敷の細密な描き込みは、読み応えが物理で目に迫るレベル。
ここに描かれるのは「暴風雨的・災害的」なホラーで、 明ければ台風一過で青空の広がる爽快感が得られます。 後味はっきりすっきりです。きっと高寺氏はじとっとした人間模様よりも、孤島とでかい屋敷とそれらがぶっ壊れるカタルシスをなにより描きたかったのかもしれないですね。
ホラー好きの人も意外とこれはチェックしてないという方多いのではないでしょうか。晩夏のおともにどうぞ。
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