皆さん初めて読んだ漫画、買った(買ってもらった)漫画、覚えているでしょうか? 自分は意外と初めて漫画を読んだのは小学3年生ぐらいからでそれまではアニメや玩具で遊ぶ子供でした。 そんな自分が父の実家の札幌にて、父が寝る前に枕元に置いてくれた漫画が初めて読んだ漫画となりました。 その漫画のタイトルが手塚治虫「ノーマン」でした。
父の実家は本棚ひとつが手塚治虫、永井豪、石ノ森章太郎作品が埋め尽くされているぐらいには漫画好きだったようでその中でも父のピックアップした、ベストの一冊がその「ノーマン」だったのです。 幼いながらにも「鉄腕アトム」「サイボーグ009」などの名前ぐらいは聞いたことのある作品を押しぬけてたった二巻の「ノーマン」...? しかも秋田文庫版のリアルタッチの表紙で作品紹介の一切ないデザインでしたので正直渡されたときには興味はあまり沸かなかったのを覚えています。
では実際「ノーマン」とはどういった作品なのかというと、手塚作品群としては中期程度にあたる時期に描かれた作品で、タイトルは読者応募によってあらかじめ決められていた作品だったとのことです。 内容としては手塚作品らしいSF漫画となっており、エスパー能力をもった少年少女(地球人だけではなく宇宙人も!)が秘密裏に存在していた月の文明の王子「ノーマン王子」に集められ、宇宙随一の凶悪宇宙人「ゲルダン星人」との戦いを描いたバトル物。
この「様々な能力を持ったキャラクター達があつめられ強大な敵に立ち向かう」といった群像劇を含めたプロットはかの「里見八犬伝」「七人の侍」などでも有名な王道ともいえる構成です。 他の手塚作品でもかの「鉄腕アトム」では名エピソードともいえる「ロボイド」、「地上最強のロボット」などが近いエピソードでしょうか。 この王道プロットはいつの時代でも絶大な人気を得る作品に採用されており、「サイボーグ009」(かなり影響大)「幻魔大戦」「大長編ドラえもん」「聖戦士ダンバイン」「JRA」「アベンジャーズ」・・・など自分の好きなタイトルを適当に思いついたものを書いただけでも本当に様々なタイトルで採用され、一種エンターテイメントの一つの完成系として存在しているプロットともいえるでしょう。 そんな王道プロットを少年漫画として円熟した中期手塚治虫が描いたこの「ノーマン」、決して知名度が他作品と比べても高くないことが嘘のようにエンタメど直球のSFバトル漫画なのです。
これがノーマンレンジャーズの隊員一覧。こういうの見るだけでワクワクしませんか?
まずこの「ノーマン」はキャラクター配置が絶妙で、主人公の中条タクはテレキネシスというわかりやすい超能力が使えるものの、地球から連れてこられたごくごく普通の少年で感情移入度はMAXといえます。
そんな主人公を囲むのが、まず美少年にして「ノーマン王子」。超能力者を集めた「ノーマン・レインジャーズ」を結成した張本人ではありますが、「中条タク」と年齢的に同じで王子としての高貴な振る舞い、時として冷徹な判断と少年らしい脆さをもったこれまた王道のキャラクター。
ヒロインには別の惑星から来た尻尾の生えた女の子「ルーピ」となかなかにエッジの効いた構成。もちろんこの「ルーピ」も分身能力を持った「ノーマン・レインジャーズ」の一員で戦いの中で「中条タク」との関係が深まっていくという最高のヒロイン。 能力も優秀で一緒に戦ってくれてそれでいて文化の違いからのギャップもチャーミング、なんだ最高の手塚ヒロインじゃないか!
ルーピの分身能力、トカゲから進化した種族ということですがめっちゃかわいいです。
「ノーマン・レインジャーズ」の隊長は犬の獣人(宇宙人ですが)ともいうべき「ブッチ隊長」。 音速で移動できる真面目で頼れる隊長として部隊を引っ張っていきます。 この「ブッチ隊長」も「火の鳥太陽編」のマリモ、耳男などにも匹敵する萌えキャラで作品的にも非常に重要な役割を担っている美味しいキャラ。
サイボーグ009ばりの光線銃捌きだけでなくスピード感抜群のコマ割りからも手塚先生の乗ってる筆が感じられます。一番下の中央上が頼れる「ブッチ隊長」
それ以外にも「ロック・ホーム」の系列に通ずる悪役として憎くて悲しい、同じ地球人の「デービッド・フライト」が「中条タク」と殺しあう関係になるというだからこれはもう狙いすぎともいえる黄金配置。
ロック・ホームや虹色いんこ似の二枚目「デービッド・フライト」透視能力と曲がる銃身を使った曲射が武器という燃える設定・・・だったのですが・・・・
他にも同じ地球人で良い兄貴分の「ルイ・ブードル」や手塚SFデザインを存分に活かした他の隊員たち、不死身の脳直を持った「ベガー少佐」、防衛戦にめっぽう強い「スンスン僧正」という主人公サイドのキャラクター配置でもワクワクが止まらない構成となっているのです。
上の隊員一覧に対応するゲルダン人の能力図。毒ガスと念動力はたしか使ってなかったと思いますが・・・(笑)ほかにも雑兵レベルで他に体内に自爆用の原爆(!)が入ってるというチート仕様。つ、強すぎませんか・・・?
それに対する強大なる敵「ゲルダン人」も相当の相手で、圧倒的大戦力と犠牲者を砂にして殺害するビジュアルインパクト大の「ギタラの毒」、大量の蟲を使った拷問など、手塚作品でも屈指の残虐さと強大さを誇る敵役として描かれています。
ギタラ毒の犠牲になるタクの父、一話からこのシビアな展開なんです
スケールの大きさでは「マグマ大使」の「ゴア」などもいますが、それでも子供好きであったりとコメディタッチで描かれることもあり、お互いにコミニュケーションが取れるにもかかわらず、惑星を滅ぼしたり、住人の生皮剥いで晒したりする「ゲルダン人」の残虐度は際立っています。
プレデターライクな生皮剥ぎさらしという残虐シーン。
また文庫二冊に収まる話ながら、スケールは大きく、ストーリーはきちんと完結している構成も素晴らしく、中期手塚作品としては「W3」「0マン」といったSF作品にも引けをとらない優れた構成の作品となっています。 とくのラストの展開は切なさと伏線の美しさ、当時の世界への憧憬を一緒に感じられる稀有な展開となっています。こちらはぜひ読んでみて確かめてください。
アクションシーンも魅せてくれます。アトムは手塚先生らしいお遊び(活躍しているゴブランは二十万馬力!)
そういった「ノーマン」は初めて漫画を読んだ自分をまんまと虜にし、更なる漫画への探訪への道へといざなったわけです。 そうすると手塚、永井、石ノ森作品で埋め尽くされた父の本棚は宝箱にも等しい輝きにも見え、それを存分に貪った後は漫画読みへの第一歩を歩むことになったわけでした。 それで紆余曲折あってまんだらけにて仕事をしているわけなのですが、それもこの「ノーマン」があったからこそでした。
残虐無比なゲルダン人の将軍のドキッとする台詞。これ、隣に自爆覚悟の敵を乗せてこの台詞です。一将軍ながら終始大物として描かれていました。
ニヒルな台詞が手塚作品らしいピリリと効く、ブラックなスパイスとなっています。
皆さんの初めて読んだ漫画はどんな作品ですか? 覚えている方はぜひ、もう一度読んでみてはいかかでしょうか。 そのお手伝いをできるのであれば、お店冥利につきるってもんです。
(中野店 黒田)
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ちなみに最終話タイトルは『終りなき歴史の終末』、うーん美しすぎる...
中野店 黒田
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