島本和彦といえば、いわずと知れた熱血漫画の大御所。その独特の何が根拠なのがわからんがパワーだけは感じさせる台詞回しが最大の特徴です。
熱血漫画、といっても実際にはパロディやギャグが多く混ぜられた単純に熱血とはいえない王道から少し外れた作風なのも特徴でしょう。
他にも、北海道で配信されていたラジオ番組やTwitterでの熱い暑い作品語りや、実質エッセイ漫画としての側面を持ち、ドラマ化でも話題になった「アオイホノオ」、Gガンダム等のアニメ作品やゲーム作品のキャラクターデザイン等で先生の名前を目にした人も多いと思います。
さて今回の「炎の筆魂 参之拳」は島本先生の短編集、その中でも最も目玉な作品が「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」そう、手塚治虫先生のマグマ大使を題材に島本先生が描いた作品なのです。
むろんそのタイトルのパロディっぷり(元ネタはあの「PLUTO」の原作になっている「鉄腕アトム 地上最大のロボット」)からもわかるように、島本先生の手塚愛と遊び心いっぱいの作品、というかこれいつもの「同人」のノリだッ!となること受けあいの愉快作です。
まず、マグマ大使ときけば誰もが金色の巨人の姿のことを思い出してくれると思いますが、その内容を知っている人は少ないと思います。
少なくとも、漫画版のマグマ大使はどこかとぼけた感じのあるお父さん(妻と息子も揃って登場します)といったキャラで、敵に正面からぶつかってはあっさりボコボコにされるヘッポコさ。
マグマ大使はロケット人間というロケットに変身できるヒーローといった趣なのですが、特に必殺技もなく敵を真正面から倒すことが殆どないキャラクターでした。
とはいえ手塚キャラはアトムにしろ、ビッグXにしろ強力な能力で敵を一方的に打ち倒したり、決まった必殺技で敵を倒す、といった展開はあまり見られないので当然といえば当然でしょうか。
そういった人間臭さやヒーロー然といた作劇の否定と特撮ヒーローが科学反応を起した結果が「サンダーマスク」という怪作なのでしょう。
それはさておき「マグマ大使」はライバルのゴアもロリショタコンの両刀という変なキャラで、あんまり優遇されているとも、パッとしてるとも言い難いマグマ大使なわけですがそんな立ち居地だからこそ島本先生が調理すると非常に愉快なことになるわけです。
こんな感じにマグマ大使も完全に島本キャラになっております…
ストーリーはタイトルどおり、自分で不遇に不満足なマグマ大使が様々な手塚キャラに戦いを挑むという聞いただけでワクワクがとまらないパロディもの。
マグマ大使本編終盤にも登場した因縁の相手、魔神ガロン(そもそも魔神ガロンとの対決は明らかに手塚先生の筆ではないストーリーで、その後に続いたストーリーも未収録という不遇っぷり)だけでなくビッグXやサンダーマスクといった同じ特撮系巨人キャラ(そしてマグマ大使と同じく不遇…)はもちろん、まさかまさかの「火の鳥」からロビタが登場したりとそのマニアックでツボを押さえたストーリーは手塚ファンなら感涙もの。
小ネタも非常に面白いので元ネタの作品をもう一度読み直したくなるという愉快な作品なのです。
待遇に不満のマグマ大使、ということなのかファンならおなじみの「手塚治虫漫画全集」の後書きネタが多く、改めて様々な作品の後書きに注目したくなること請け合いです。
これがうわさの全集版後書きだ!燦然と輝く「サンダーマスク」の4行(ほぼ3行)文に啼け!
この漫画は島本先生が、そんなファンなら誰でも創造するような夢の対決を最高のギャグに乗せてお送りするという最高の手塚ファンへの贈り物ともいえるでしょう。
いまでこそ「ヤングブラックジャック」を筆頭に様々な作家が手塚作品をリメイクした作品が多くなりましたが、この「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」はその先駆けともなるタイトルといえるでしょう。
ここまで「手塚作品」で遊んで良い!、ここまで「手塚作品」を深く語って、読み取って良い!のだと世間に知らしめた意味で大いなる先達の作品といえるでしょう。
これからも数多くの手塚作品がこれからもリメイク、リスペクトされていくことでしょうが、この作品が切り開いた手塚パロディの輝きは今でも美しい宝石のようにきらめいているのです!
マグマよ・・・
永久に地球を守りぬけ・・・・・・
そんな手塚ファンならぜひ読んでもらいたい「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」が収録された「炎の筆魂 参之拳」貴方の本棚に手塚作品と一緒に並べてみてはいかがでしょうか?
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(中野店/黒田)
中野店 黒田
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