ちょぼ先生、『あいまいみー』アニメ3期決定おめでとうございます。中野店の長谷川です。秋なんてなかったというレベルでもうすっかり冬ですね。夏はなんとかエアコンなしで生活できたんですが、冬はマジで死ぬかもしれない危険性があるので、最近ケーズ電気でエアコンを買いました。昨日、取り付け工事があったのですが、僕の部屋には壊れて2時間遅れの時報をキャラクターボイスで知らせてくれる「けいおん!!」の壁掛け時計というものがあって、黙々と作業をするおじさんと僕との無言の空間に「12時だよ!(10時)」という平沢唯ちゃんの声が響き渡り、芭蕉が「古池や蛙飛び込む水の音」と詠んだ時の気持ちになりました。
というわけで、今回ご紹介する作品がこちら。
『鬼頭莫宏短編集 残暑』鬼頭莫宏/小学館/2004年
『なるたる』や『ぼくらの』で有名な鬼頭莫宏先生の短編集です。
交通事故で死んだ妹の幽霊とデートするデビュー作の「残暑」(1987年!)から、ある駄菓子屋をめぐる喪失と少年たちの成長の話「ポチの場所」(2004年)までの計7作品が収録されています。一貫して流れるのは、コマの余白に宿る余韻というか、独特の喪失感。それでも暗い話にはならず、爽やかささえ感じる終わり方。各短編は人が死んだり幽霊がでてくる話が多いのですが、不思議とカバー絵にある澄み渡る青空のような読後感のある作品集です。
その中でちょっと毛色が違うのが忌野清志郎の同名曲がタイトルの「パパの歌」です。
まず、人も死なないし幽霊も出てこない。少年少女も登場しない。里帰り出産のために妻の実家に帰る若い夫婦の車中での会話がメインの話です。
それだけの説明だとかなり地味な印象ですが、これが名作。伏線の回収といい、会話のうまさといい、最初の印象からラストでの意外性といい、「雨上がりの夜空に」から「パパの歌」へのズラしと反復といい、短編の構成として言うことない出来です。
車とギャンブルとRCサクセションの「雨上がりの夜空に」が好きで、金髪でヤンキーっぽい風体の隆(夫)。
それに比べ、タバコもギャンブルもせず、酒も付き合いくらいで、趣味は居間の掃除という、いかにも中年サラリーマンという風貌の松葉(妻)のお父さん。
見た目も性格もまったく違うように見える2人ですが、松葉は最近なぜかお父さんのことを思い出してしまうし、(松葉の)母には隆がお父さんと似てると言われる。なぜなのか。いわゆるミステリー風の大どんでん返しがあるわけではありませんが、一つ前に引用した「雨上がりの夜空に」のページの伏線が見事に回収されていて、心憎いです。というか、お父さん最高にかっこいいぜ!
あと、このページの「松葉、そういう趣味?」への「バカ?」の返しがいいですね。なんかもう、これだけでこの2人の関係性がわかるような気がして、すごくしっくりきます。というかただ単純に、僕が疑問形で「バカ?」と言われたいだけのような気もしてきましたが、それはそれで。
会話のかけ合い自体も、一枚上手の妻と尻に敷かれてる夫、でも意外と夫に甘い妻と意外としっかり将来のことを考え始めた夫の、なんだかんだいい組み合わせだなと思わせる若い夫婦感が出ててすごくいいんですが、下の画像のようなちょっとした会話のズレというか時間差みたいな演出はもっと好きです。こういうのが、リアリティとか間とかテンポとか言われてるやつですよね、きっと。
特にパパになる予定も里帰り出産の予定もない僕ですが、人はこうやって少しずつパパになるのかもなー。と暖房が効いた部屋でアイスを食べながら思った秋の夜長でした。
(担当:長谷川)
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中野店 長谷川
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