佐倉綾音のファースト写真集『さくらのおと』が発売になりましたね。僕はセブンネット限定カバーバージョンを2冊購入しました。あとがきに書かれていた、こういう仕事はあまり得意ではないあやねるが写真集を出すことの背中を押したであろうお母さんの「私たちはもう彩音のそばで日常を撮って残してあげることはできないから」という言葉に、それまで「あやねる!めっちゃかわいい!すごい!やばい!かわいい!」と語彙力/Zeroの興奮状態で読み進めていた僕の脳もクールダウンして、少し申し訳ない気持ちになりつつも、いい家族を持ってあやねるは幸せだな......と目頭をそっと押さえました。ちなみに僕の中でのベストショットは、幼少期にボクっ娘だったというエピソードを思い出さざるを得ない白いTシャツに白いスニーカー、カットオフジーンズにパズーが被っているようなグレーの帽子を被り犬っぽいものを抱いている写真です。インタビューではほぼ4分の3が仕事(声優)の話という、ラジオでおもしろい事を言うあやねるとは違う、声優という仕事に対するあやねるの真剣さ、真面目さ、プロ意識が伝わり、ますます好きになりました。中野店の長谷川です。
そしてまったく関係ないですが、最近のあいまいみーで一番笑った話をリンクしときます。「なろう!なろう!明日なろう!明日は大きな木になろう!」最高ですね。ちょぼ先生、あいまいみー8巻発売おめでとうございます。 http://mangalifewin.takeshobo.co.jp/rensai/imyme/aimai-138/18403/
今回ご紹介する漫画はこちら。
『やれたかも委員会』吉田貴司/双葉社/2017
現在AbemaTVで実写ドラマが放送中なのでご存知の方も多いかもしれません。題名のとおり、もしかしたら......あの時違う行動をしていたら......ヤレていたかもしれない...! というエピソードを聞き、やれたかも委員会の3人が実際にもっとうまくやれば「やれた」のか、はたまた何度ループしたとしても「やれたとは言えない」のかを判定するだけの漫画です。
本編に入る前に、まずこのカバーの女の子の「慰めに来てやったぞ~」がかなりナイスなグッドバイブレーションを醸し出していますね。これでジャケ買いしたのは僕だけではないはず。夜空ノムコウの歌詞で例えると、僕の心のやわらかい場所を今でもまだ締め付けてきそうな感じがビンビンしますね。
やれたかも委員会の3人。なぜこの3人なのかはわかりませんが、回を追うにつれ、やはりこの3人でなくてはならなかったのだという謎の説得力が出てきます。特に財団法人ミックステープ代表の月満子氏はウィトゲンシュタインにも引けを取らない論理的思考力で、我々のハートを粉々にしていくロジカルモンスターです。
基本的には誰かのやれたかもしれないエピソードが毎回語られる一話完結モノなので、各話ごとに繋がりはありません。その中の1エピソード「case003 焼きそら豆と内もものぬくもり」をご紹介。
出鼻から、謎ポエムが哀愁を誘いグッと引きこれます。
そして、いつもなんか面接みたいな雰囲気の中、ねこ動画を観るパラディゾ。はじまりにいつもこの謎の間があるのが、大切な儀式のようでいてどうでもいいような感じを醸していい空気を作り出しています。
今回のやれたかもエピソードの話者は不動産会社に勤める長谷部さん。8年前、23歳当時のお話です。上京したてで仕事も駆け出し。友達も恋人もおらずいつも1人。勇気を出してデートに誘った女の子には2回目でフラれる有様。そして某巨大掲示板に書き込みます。掲示板というところが少し前の時代を感じさせますね。
そこに現れる、例の「慰めに来てやったぞ~」系女子のヒロミ(23)。おっさんだと思ってたら、かわいい女の子が! そんな電車男みたいな話あるか! というツッコミを置いといて、厚揚げと焼きそら豆です。
大事なことなので2回。やはりこういうのはディティールが大事ですね。焼きそら豆という選択にほぼすべての女子力がかかっていると言っても過言ではないでしょう。焼き銀杏でもシーザーサラダでもなく、焼きそら豆。負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、焼きそら豆、それが一番大事。
『はせっち』、ボディタッチ、酒、『あたしこーゆーの引き寄せちゃうんだよねー』
『トイ・プードルと彼氏と住んでる。まあ...あんま帰ってこねーけど』
その後、カラオケで2人で「HOWEVER」を熱唱。空が明け始めたころに店を出て、コレです。
いい「およよ?」です。そりゃ23歳で急におんぶとか言われて、しかも本当におんぶしたら「およよ?」だよな......。としか言いようがない「およよ?」です。しかし、この「およよ?」期が我々人類の絶頂期でした。この後、ヒロミ(23)はなぜかコンビニで米を買わなきゃと言って、おんぶを離脱。はせっちもヒロミの家に犬を見に行きたいと言い出せず、犬の名前を聞いただけで、THE END。
犬の名前なんて聞いてる場合か! もっとお前にはやるべきことがあるだろ! ヤルべきことが...! というツッコミなど無粋ですね。もちろん塾長は渾身の「やれた」判定。
というかこの人どのエピソードでも「やれた」札しか掲げません。ただのやれた派です。ある意味慈愛に満ち溢れた優しい男です。
やれたかもしれない人に最後に送られる塾長の謎ポエム。深い......のかな? でもなぜか心には滲みてきます。 そして最後の最後にロジカルモンスターの登場です。
「お米 明日でもよくない?」おんぶ降りるキッカケ! 彼氏いるかもしれないから日常にもどろう! その発想はなかった......。すごい説得力! でもわからないよ! 本当にたまたまお米切れてたの思い出したのかしれないしね! はせっち! ドンマイ! 次行こ! 次!!
小説家の保坂和志さんとの巻末対談でも、やれた夜はむしろ人をおもしろくさせないという話がでていました。他人のやれた話なんかどうでもいいのと同じように。やれたかもしれないけどやれなかった夜のほうが、人生にとって残るもんなんだと思います。それは後悔といってもいいかもしれない。人生には取り返しのつかない後悔もありますし、後悔なんてしないならしない方がいいのかもしれない。それでも、やれたかもしれないけどやれなかったという経験は、やれた経験よりも尊いものであると思います。父にありがとう、母にさよなら、そして、すべてのやれたかもしれない世界の住人たちに祝福を。
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中野店 長谷川