おぉ、相棒、ラーメン食いに行こうぜ!

 梅の木もほんのり色づき、気温も上がって日中はポカポカ陽気な日々が目立つようになってきました。春の気配がまぎれもなく現れてきた今日この頃ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。僕はといえば、休みの日は相変わらずブックオフと古着屋巡りの途中にマルイで用を足すというスタンダードコースを飽きもせず繰り返す日々を送っております。古着屋も古本屋もどちらもなぜか便意に拍車をかけてきますよね。なんなんでしょうね、あれ。先日は、少し足をのばして調布の方まで行ってきました。いつになっても初めて訪れるブックオフのWAKUWAKU感は、大海賊時代の訪れにも匹敵する胸の高鳴りを我々にもたらしてくれます。それではお聞きください。BGMはもちろん、Rayで「初めてガールズ!」。中野店の長谷川です。

 さて今回ご紹介する漫画はこちら。

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『ぼくのわたしの勇者学』麻生周一/全6巻/2007~8年/集英社

 つい先日ジャンプ誌上でΨ終回をむかえた『斉木楠雄のΨ難』の麻生周一先生の初連載作品です。  僕は『斉木楠雄のΨ難』はアニメから入ったクチで、漫画の方は最初から毎週追っていたわけではないのですが、アニメは1期から大好きで現在放送中の2期も安定した面白さで毎週楽しんでいたわけですが、急にΨ終回とは寝耳に水でした。もう念堂の唐突な「おぉ、相棒、ラーメン食いに行こうぜ」が聞けなくなるのかと思うとセンチメンタルな気持ちになります。  「ラーメン食いに行こうぜ」と言えば、アニメ2期第8話の「Ψチャレンジ!タイムリープ」は最高でしたね。テレビの前でフォヌカポゥ級に笑いました。僕がいわゆる「テンドン」(同じギャグなどを繰り返すこと)に弱いというのもありますが、それ抜きにしてもおもしろい。やはり、普段からラーメンを食べに行くことしか提案しない念堂の頭のおかしさがループによってさらに加速され、狂気じみてくるところでしょうか。壊れた目覚まし時計みたいになった海藤もかわいいですしね。それにしても念堂のCVの小野大輔さんは素晴らしいですね。なかなかこんな何も考えてない声出せないですよ。斉木のCVの神谷浩史さんも、この人も大人気声優なので色々代表作がありますが、僕の中では斉木がベストアクト。感情のない無表情キャラなのに、早口でツッコミまくるという演技がうまいことを視聴者に悟らせないレベルでうまい。感情がない主人公と言えば、『インフィニット・ストラトス』の織斑一夏役の内山昂輝さんと『魔法科高校の劣等生』のお兄様役の中村悠一さんという二大巨頭がすぐに頭をよぎりますが、斉木は感情がないわけではなく、あくまでやれやれ系の延長で感情が抑制されている冷静なトーンとツッコミという微妙なニュアンスを、モノローグ+ナレーション風に演じることで、すごく自然にスッと頭に入ってきます。

 斉木楠雄の話が長くなりすぎました。『ぼくのわたしの勇者学』も登場人物全キャラの総ボケに対して、準主人公の河野盾(こうの じゅん)がひとり果敢にツッコミまくるスタイルです。その辺りは「斉木楠雄」にも受け継がれています。

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 モノローグでとにかくガンガンツッコむ河野盾。

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 こちらが主人公の鋼野剣。勇者兼教師です。勇者学という授業を教えるために赴任してきたことになっていますが、その実体は勇者のコスプレをしたただのゲームが好きなバカです。というか登場人物はほぼすべてバカです。

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 ギロチンのまさゆきこと宗村まさゆきです。不良っぽく登場しますが、1話目にして鋼野にジャスティスアイアントルネードボールで粉砕され、2話目に改心して鋼野の舎弟みたいなポジションに落ち着きます。

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 勇者学と鋼野を疑問視し、ストーキングしているうちに敵視するようになり、鋼野を辞めさせるために日夜励み続ける英語教師の茨城ムチコ(22)独身。

 その他にも、恐らく自分が魔王をやりたいがためだけに鋼野剣を赴任させた校長(魔王)や、盾が思いを馳せるヒロイン?のクラス委員長の黒須矢弓(その後出番が少ないという理由でグレる)、そしてブタ(小野石男)の裏切りにより勇者部に改名させられたゲーム研究部の面々など、オールバカなゴキゲンなキャラクター達がボケ倒し、そのすべてのボケに細かく盾がツッコミを入れていくギャグ漫画です。

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 キャラクタープロフィール紹介ページにも律儀にツッコむ盾。ちなみに真道はただのイケメンではなく、「関東の暴れ貴公子」という二つ名を持つゲームの達人ゲームキングです。

 絵柄は荒削りですがこれが連載デビューとは思えない手数とテンポの良さ、自虐ネタに走りすぎないバランス感覚など、ギャグ漫画としての完成度の高さが垣間見られます。作者は2007年当時若干22歳です。2巻の巻末にデビューの経緯が書かれていますが、元々はストーリー漫画志望で、手塚賞に応募するついでに赤塚賞用に1週間で仕上げた原稿が『ぼくのわたしの勇者学』の元になったであろう「勇者パーティー現る」で、それが赤塚賞に準入選してデビューというのも驚きです。

「斉木楠雄」の連載が終わった今だからこそ、斉木成分が足りない読者は是非!

最後に、僕が一番好きな勇者部(元ゲーム研究部)のブタこと小野石男の酷い扱われっぷりを紹介します。テンプレ的なオタクキャラとシンプルな3段落ち。素晴らしいですね。

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『ぼくのわたしの勇者学』の通販はこちらから https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=00&keyword=%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%AE%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%AE%E5%8B%87%E8%80%85%E5%AD%A6

麻生周一先生のその他の作品はこちらからどうぞ。 https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=00&keyword=%E9%BA%BB%E7%94%9F%E5%91%A8%E4%B8%80

中野店 長谷川

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