言わずと知れた、岩明均の90年代SFマンガの最高傑作「寄生獣」その次に連載された作品が「七夕の国」になります。この作品は「寄生獣」の大ヒットの影に隠れて、知名度はいまいちといったところでしょうか。
戦国時代の旧暦4月「丸神の里」と呼ばれる小さな集落が冒頭で登場します。
この地に住む人々には、2種類の超能力者が存在します。
作中では「手が届く」能力と「窓をひらく」能力と呼ばれており、
「手が届く」とは、「窓」と呼ばれる丸い球状のようなモノを手の平からを作り出し、対象の物体に当てると削りとる事ができる能力。対象が球体より大きい場合は、同体積分を削りとり、小さい場合は周囲の連なった物体も一緒に削りとる。
これが窓をひらく能力。物体(椅子)に球体が当たると激しい光と共に
「パァアン」と破裂音が鳴り削りとられる。
イメージ的には「ジョジョの奇妙な冒険」第3部に登場するヴァニラ・アイスの能力クリームや第4部の虹村億泰のザ・ハンドの能力に近いです。
こちらが「ジョジョ」。上画像が、スタンド能力「クリーム」口の中が暗黒空間と繋がっており、飲み込まれたら最後。突っ込まれた場所(人)は丸い穴が開く。
下画像が、「ザ・ハンド」右手を振り下ろすと空間をも削りとる能力。
対象が離れていれば、削りとった分だけ引き寄せる事ができるのだ。
「七夕の国」に戻りますと、この能力の使い手は少数しかおらず、大きさも個人差があり、数ミリの穴からボール大・スイカサイズ・数百メートル級と個人差があります。
大きさにもよりますが人に当てると致命傷確実です。
物語は戦国時代から現代へと壮大なプロローグから始まり、現代にも里の血筋は脈々と受け継がれ、主人公(現代の大学生)がその血筋で「手が届く」能力者というワケです。「窓をひらく」能力はあえて説明しないでおきます。
ミステリー色が強く、展開の謎解きも併せて楽しめます。
「寄生獣」でもそうですが、のほほんとした温厚な性格の主人公が能力を覚醒していく様や、平和な日常に突如として起こる残虐な事件は異様な緊張感を作り出しています。オリジナル版で全4巻と手に取りやすい長さです。
ちなみにこれが主人公・南丸洋二。能力覚醒前。「新技能開拓研究会」部長。
凄まじい顔で精神集中するも紙7枚を数ミリの穴しかあけれない。
※「七夕の国」の通販はこちらから。
さて、この「七夕の国」にインスピレーションを受けて出来た曲も紹介します。
三上寛のアルバム「南部式」に収録されている「丸い球状のようなもの~岩明均に向けて~」という曲です。
三上寛(みかみかん)とは、71年レコードデビュー。主にフォーク・ブルース系のソロシンガーです。寺山修司と同じく青森の出身で映画「田園に死す」や舞台「邪宗門」に出演したりと俳優やTVリポーターなどミュージシャン以外でも活動。現在も現役で小田舎のライブハウスから、青森のロックフェスティバルなど全国行脚しており、独特のわななく様な歌声が難解な歌詞に相まって魂に響きわたります。日本のフォーク・ロック史を語る上で外せない重要人物です。
僕も昔、小樽の小さな喫茶店の最前席でLIVEを見ましたが、まるでジャングルで野生のマウンテンゴリラを至近距離で見るような恐さと感動を覚えました。近くでLIVEがあれば是非足を運んで欲しいです。
曲の話に戻りますが、「丸い球状の~」の歌詞を一部抜粋します。
・2001年宇宙の旅をあの日渋谷で選んだ俺だが
・手と手の隙間のもしあれが
・2001年その年ならば
・やるべき事が俺にはもうない
これだけ見ても意味不明ですね。少し解説します。
【2001年宇宙の旅をあの日渋谷で選んだ俺だが】
スタンリー・キューブリックのSF映画でおそらく、1978年に渋谷で再上映された映画を三上寛が見たのでしょうか。
【手と手の隙間のもしあれが】
先ほど説明した「手が届く」能力で両手の間から作り出される球体の事。曲名と同じ意味かと。
【2001年その年ならば】
映画2001年宇宙の旅と同じ年。ここで言う未来。
【やるべき事が俺にはもうない】
これは、たぶん物語の核心に触れています。マンガの連載が96年~なので、作中の時間軸も恐らく同年代かと。「2001年宇宙の旅」と「七夕の国」の内容が似た部分があるのかもしれません。未来は人間以外の何者かに託されるのでしょうか。
音楽と漫画と映画を併せて鑑賞すると、より想像力が膨らむかも知れません。
そして、三上寛の曲からインスピレーションを受けて出来たマンガも紹介します。
うめざわしゅんの「パンティストッキングのような空の下」です。
単行本未収録作を集めて約450ページあり大容量。
※ 通販はこちらから。
新井英樹や花沢健吾が好きな方には特にオススメします。
同名の曲がアルバム「ひらく夢などあるじゃなし」に収録されております。
佐伯俊男の絵が三上寛の世界観をより濃密にしています。
主人公が三上君と名前も拝借しており、作者の好き度が伺えるところ。
他にも「平成の大飢饉予告編」は同アルバムに収録の「昭和の大飢饉予告編」を
おそらく文字ったものでしょうか。マンガからインスピレーションを受けて出来た曲。
またその逆に出来たマンガなど探せば結構な数があります。また次の機会にご紹介できればと思います。
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