生き物を飼うということ

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犬を飼う 谷口ジロー

子供の頃に犬を飼いたいと強く願い、小学生のある時、我が家に突如として現れた犬は予想に反して可愛くなくて愛着が持てずに全然嬉しくなかった思い出があります。

親戚が新しい犬を飼いだしたので、前任の犬は用済みとなり(ヒドい)、ウチの父親が嫌々引き取る事になったという経緯から犬を飼う事になり、それまで幼心に抱いた「犬を飼いたい」という夢が脆くも潰えた瞬間でした。
種類は成犬で雑種、ブルドッグみたいな顔をしたヤツで、この種でよくある「ブサ可愛い」の可愛いが1ミリもない面構えをしており、挙句の果てに名前が「ナヌク」という
、何でそんな名前付けたの??と頭にクエッションマークが100個位浮かび上がるくらい謎多きネーミングセンスに悶絶の嵐が吹き荒れました。

犬を飼う楽しみって、その犬の特長やその時の季節や場所だったり、好きなキャラクターや人名からインスピレーションを受けたりしてなるべく可愛い名前を考えてあげるのが愛着を持つ一つの要因だと思います。

それが最初から名前が決まっていて「ナヌク」って知らされた日には思考を停止する他ありません。結局名前の由来は聞けずじまいですが、「何食わぬ顔 ナニクワヌカオ」(実際そんな顔してた)から「ナヌク」だと勝手に解釈しています。もしそれが正解だとしても酷いですね。

そんなナヌクも小学生の頃にやって来て、犬なのに糖尿病になったり、散歩の序盤で息を切らし腹を地面に付けて拒否したり、釣ってきた川魚を生のままエサとして貰ったり(もちろん食わない)、頭を触られるのを異様に嫌がったり、お菓子を地面に埋めたけど場所が分からなくなったりと思い出は尽きません。
あれから、なんやかんやで10年近く生きてくれました。ありがとう。
っと...我が家のどーでもいい話を長々すいません。

で、谷口ジロー「犬を飼う」です。
この本は原作付きが多い谷口ジロー作品の中でもピンでクレジットされているモノで言わば、ノンフィクションに近い実話が描かれています。
犬に川魚(一匹そのまま(生))をエサとしてあげる(私の仕業です)ような酷い話など無く、高尚な人間とペットの愛ある物語です。
ちなみに犬に川魚(生)を食わすのは御法度のようで命に関わることになるのでヤメましょう!

物語は15歳でこの世を去る愛犬の最後の一年間に焦点を当てて描かれています。
チラッと画像付きで解説します。
※主人(谷口ジロー)が「孤独のグルメ」の井之頭五郎に似ておりますがメシは食いません※


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河原で遊ぶ犬を見守る谷口夫妻。犬の足は弱りはじめており、おぼつかない。
二人は複雑な心境だというのが痛い程伝わってくる。


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どんどん老化していき、散歩も人の手を借りなければならない状態。「犬にとって食事の次に楽しみなのが散歩だ」とあるが、自由に歩けない姿を見るのは辛い。


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そんな、お互いにとって辛い日常にひと息つく瞬間がある。

あとがきでこの作品が出来上がる経緯を作者自身の言葉で書かれてますが、
「子犬の頃から死ぬまでの長編になる物語を考えていたのですが、読切となるとそうもいきません」
-中略-
「もう少しゆとりの感じさせるコマも必要だったのではないかと後悔しています。」とありますが、この主人と犬がブロック塀近くでひと息つく1ページに全てが凝縮されていると感じます。

そして、悲しい時がやってきます。
生き物を飼うというのは死ぬまで面倒を見る事。簡単で単純ではありません。
この短編42ページでよく分かります。


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次ページは...
「そして...猫を飼う」
あらら、次は猫ちゃん飼うんですね。

と、谷口家に新たな飼うシリーズが始まります。
このお話はここで紹介しませんが、決っして犬が死んじゃったから、次は猫を飼おうという能天気なモノではなく、犬を亡くし傷心の夫婦が、ある日貰い手がいない猫を連れて帰ってきて飼う決心をする心優しき物語です。

あの日ナヌクを連れてきたウチの親父も同じ心境だったのでしょうか。
何にせよ、今でも犬を飼うという夢を諦めきれないでいる担当田村でした。
ちなみに「犬を飼う」の犬の名前は「タムタム」で夫妻に「タム」と呼ばれています。
私も両方同じ呼び名で職場で呼ばれているので複雑な心境でした。

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