まずは別の漫画から、サチ姉さんの名言を。
「数学ってできると楽しいよね」(柊ゆたか:アスキー・メディアワークス)
「数学」は分かると面白いんですよね。その「面白さ」を追体験できるのが「数学ガール」という作品です。
そして今回紹介する「数学ガール」は同名の数学書のコミカライズ作品です。
この「数学ガール」と他の数学書の大きな違いは、数式と同じくらいの比率で物語が含まれていること。主人公「僕」を語り手に、数人の「数学ガール」たちとの会話で数学の問題に取り組んでいきます。
その原作「数学ガール」は2016年3月現在5冊出ています。
それぞれ、
1巻:(副題なし)
2巻:フェルマーの最終定理
3巻:ゲーデルの不完全性定理
4巻:乱択アルゴリズム
5巻:ガロア理論
となっていて、このうち1~3巻までがコミカライズされています。今回紹介するのはその2作目「フェルマーの最終定理」。
これを選んだ理由として、一番数学的な部分がしっかり描かれていること。端折られているのは、最後の部分くらいといっていいでしょう。
まずは、登場人物紹介。
主人公の同級生の才媛・ミルカさん
主人公の後輩で英語が得意・テトラちゃん
主人公の従妹の中学生・ユーリ
数学の理解度でいえば、
ミルカさん>主人公(僕)>テトラちゃん>ユーリ
となり、問題の難度に合わせた組み合わせで会話(解説)が行われます。
「互いに素」の説明として完全巡回数の実例を解くユーリ。
ピタゴラス数と原始ピタゴラス数の違いについて考えるテトラちゃん。
「原点中心の単位円上に有理数は無数に存在するか」という問いの解説を僕にするミルカさん。
さて。
ミステリーでは伏線を回収することで物語の爽快感を味わうことができます。それは数学でも同じです。とくにフェルマーの最終定理はさまざまな数学の要素が組み合わさって証明となります。
この物語はいわば「フェルマーの最終定理」という真犯人を捕まえる手がかりを、順に集めていくことで成り立っています。そして、そこに辿り着くまでに息切れしないよう、各巻にも盛り上がりがあります。
1巻のクライマックスは代数の問題と幾何の問題が「本質的に同じである」こと。
2巻では群論の話に1巻の単位円の話が出て来ます。「あ、ここでそれが繋がってくるのか」という驚きがあります。
3巻では群に加えて、環・体が出てきます。ここらへんからひときわ難しくなってきますが、ひとつひとつをゆっくり考えていきましょう。テトラちゃんみたいな感動が味わえるかも?
ここで真犯人である「フェルマーの最終定理」とはどのようなものか、も見てみましょう。実は作中で「フェルマーの最終定理」という言葉が出てくるのは3巻も中盤に差し掛かってから。まさにミステリーにおける解答編、といった趣があります。
こちらは原作の「数学ガール」のほうから。
「ノートの端に走り書きで『驚くべき証明を見つけたが書き記すには余白は狭すぎる』とあった」
「世界中の天才たちを持ってしても証明するのに350年かかった」
もうこの話だけでドラマチックすぎます。
「数学ガール」では「証明」のほうに重点が置かれていますが、証明されるまでの350年に焦点を当てた物語も無上の面白さがあります。
ドラマチックな分、様々な種類の本が出ています。そちらに興味がある方には、読み易くかつ入手も楽なサイモン・シン「フェルマーの最終定理」(新潮文庫)をオススメしておきます。
ちょっと脱線しました。話を戻します。
解答編は当然「フェルマーの最終定理」の証明になりますが、さすがにその細かいところまでは漫画では端折られます。
ただ、数式は追えなくとも、論理を追って解答とします。
このシーン、原作の「数学ガール」にもあるのですが、解くのがユーリというのが素晴らしい。今までの内容を組み立てれば「フェルマーの最終定理」証明の流れが理解できるように物語が出来ている、という再確認でもあるのです。
以上で、Q.E.D.です。
蛇足として。
「数学ガール」は非常に丁寧に「考え方」を示してくれる本でもあります。
「問題に隠れている数の法則を見抜けば自分が行けない未来や世界の果てまで見通すことができる」
「例示は理解の試金石」
「こわいから『間違うくらいならわからないことにしちゃえ』と思っているでしょう」
「計算の途中でミスをする、それに気づく、間違ったところからやり直す......その繰り返しだ」
「間違い」は恐れるものではないのです。
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