デスゲームものの原点:高見広春×田口雅之「バトル・ロワイアル」

明確な定義があるわけではないですが、分かり易いために多用されるのが「ジャンル分け」です。
 
恋愛モノやバトルモノ、スポーツモノにビジネスモノ等々。
ボーダーレスのものも多いですが、何かひとつ軸があったほうがピンボケせずに済みます。
 
ところで、最近はどの漫画雑誌を手に取っても載っている、ひとつのジャンルがあります。
誰ともなく言われ始めたジャンルの総称は「デスゲームもの」。
 
いわゆる「参加者同士による殺し合いもの」です。
ただ、そう定義するとあまりに多くのものがこのジャンルの対象作品になってしまうので、ここでは
 
「(理不尽な方法・手段によって集められた)参加者同士による(押し付けられたルールでの)殺し合い」
 
とします。
 
枠組みが単純な割に、いろんなパターンが考えられるため、今や一大ジャンルとなっています。
しかし、今回紹介する、デスゲームものの走りとなった「この作品」が世に出たときは、今ほどメジャーなジャンルではありませんでした。
 
何せ「この作品」の売り出し文句が
 
「某小説大賞最終選考にて 『非常に不愉快』『こういうことを考える作者が嫌い』 という理由で落とされた問題作」
 
ですからね。
というわけで、今回紹介する作品は原作・高見広春、作画・田口雅之「バトル・ロワイアル」です。
 
2017092901.JPG  2017092902.jpg
 
 
原作小説の刊行が1999年、漫画の連載開始が2000年と、実に20年近く前の作品です。
 
「デスゲームもの」が溢れている現在では、類似の他作品と差別化するために様々な追加設定があるのが普通になっています。
特殊技能や細かいルールの裏を斯く知恵競べ的な作品が多い昨今の「デスゲームもの」。
対して、当時類似の作品がないため差別化する必要がない「バトル・ロワイアル」は実にシンプルな構成をしています。
 
・登場人物はとある中学校のひとクラス
・超能力的な特殊能力はなし(中学生離れしているキャラは多々いますが)
・キャラは増えない(ただ淡々と登場人物が減っていく)
 
もう、ここまでシンプルにはできないんじゃないか、というくらいで、それゆえにフォロワー作品がどれほど増えても色褪せない魅力があります。
 
そうした"普通の中学校のクラス"に、
 
「舞台は大東亜共和国という架空の全体主義国家であり、ランダムに選ばれた中学3年生の1クラス全員に武器を与え、1人の最終生存者になるまで見知りあったクラスメイト同士で互いに殺し合いをさせる『プログラム』という催しがある」
 
という設定を放り込むことで始まる物語は、登場人物たちの内面を丁寧に描くことで"青春物語"や"成長物語"に、設定上当然起きる殺し合いを描く"バトルもの"に、疑心暗鬼が生む"サスペンスホラーもの"に、犯人を探す"推理もの"に、様々な側面を見せながら最後の1人になるまで疾走します。
 
シンプルな設定ながら物語を非常に印象的なものにしている要素はいくつかあると思います。
細かいシーンを紹介するとネタバレの嵐になってしまうので、以下、そうした要素をいくつか紹介して作品紹介に替えたいと思います。
 
まずは「バトル・ロワイアル」の、ひいては「デスゲームもの」の象徴ともいえるこのシーン。
 
2017092903.jpg
 

小説では地の文の続きでとくに目立った扱いのない台詞ですが、漫画では大きく見開きです。
ありふれた言葉を組み合わせて異質な状況を一瞬で理解させる、よくできた言い回しです。
 
この台詞を皮切りに、どんどん人が死んで行きます。
 
次に、この物語を面白くしている魅力的な登場人物として、特に以下の3人を紹介します。
 
主人公・七原秋也
2017092904.jpg
 

物語のガイド役・川田章吾
2017092905.jpg
 
絶対なる敵役・桐山和雄
2017092906.jpg
 
主人公・七原は熱血漢で、絶望的なこのデスゲームの最中にもクラスメイトを信じて、ゲーム自体からの脱出を試み続けます。
とにもかくにも前向きで、作中のような状況でも健全な精神を失わない、読者の代弁者。
 
川田章吾は転入生で、クラスで浮いた存在だが『プログラム』のことに詳しく、七原(=読者)のガイド役になる。
 
そして、桐山和雄です。
個人的には、この物語を面白くしている一番の立役者だと思っています。
他のキャラが大なり小なりクラスメイトを殺すことにためらいを覚えている中、容赦なく血の雨を降らせます。
そのためらいのなさに『理由がない』ことが凄い。
「○○だから生き残らないといけない、そのために殺す」とかではなく、
 
201709290701.jpg
201709290702.jpg
 

「コインで裏が出たから殺す」です。
読者に対しての感情移入の拒否であり、『プログラム』内における象徴的な"敵"として描かれます。
 
この3人がそれぞれの役割をこなすことで『プログラム』が「物語」として語るに耐えるものになっています。
 
こう紹介して分かるのは、登場人物が実に合理的に配置されていることです。
この3人に限らず、クラスメイト42人がそれぞれ物語の都合のいいように配置されています。
しかし、それは物語の面白さを減らす要素ではなく、そのために『プログラム』というデスゲームが面白く演出されているのが分かります。
 
最後に漫画版での強み。
やはりイラストの力は強く、特に掲載誌がヤングチャンピオンという青年向きの雑誌だったこともあり、漫画版で強調されるのは"グロ"と"アクション"です。
 
2017092908.jpg 2017092909.jpg
グロい!
 
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2017092911.jpg
アクションシーン! ......ちゅ、中学生?
 
遠慮のない刺激が、田口雅之の精緻な筆致で描かれます。
怖いもの見たさで読む層も一発で満足させる迫力です。
 
『こういうことを考える作者が嫌い』といわれた設定を、どの雑誌にも載ってるような一大ジャンルに押し上げた作品の力、未読の方は是非手に取って確認して欲しいものです。
 
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うめだ店 山本

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