2017年オススメの漫画たちと、ワクワクが詰まったロケット作り漫画・森田るい「我らコンタクティ」

2018年になりました。 去年も沢山の漫画を読みました。よくもまぁ、次々面白い漫画が出るものだと感心しきりです。

そんな中で、2017年に出た漫画(正確には2016年10月〜2017年9月)から特に面白かったものとして、自分・山本コウが宝島社さんの「このマンガがすごい!」に投票したのがこちら。

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1:「アニメタ!」(講談社:花村ヤソ)
2:「鬼滅の刃」(集英社:吾峠呼世晴)
3:「HITMAN」(エンターブレイン:ガース・エニス)
4:「甘木唯子のツノと愛」(エンターブレイン:久野遥子)
5:「映画大好きポンポさん」(メディアファクトリー:杉谷庄吾【人間プラモ】)

1位に推している「アニメタ!」については、2巻が出たときにこのブログで記事を書いたので、そちらもよろしければご覧ください。

→ SAHRAの本棚:アニメは「愛」で作るのだ。アニメの現場な漫画、花村ヤソ「アニメタ」 (https://mandarake.co.jp/dir/hondana/staff/2016/07/29/post-208.html

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上記の記事を書いた後、3巻が2016年10月に(これがぎりぎり今回の投票期限にひっかかったので投票できた)、作者が体調崩されてしばらくの休載を挟み、4巻が2017年10月(こちらは実は期間外)に発売になりました。
アニメーターのやる気搾取の話や、制作委員会制度の話など、さらに切り込んでくる内容に、手に汗握るとともに胃も痛くなる(!)のでオススメです。

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で。 今回は「アニメタ!」以外の作品から何か紹介しようかと思っていたのですが、期間外の2017年11月にこれまた超面白い単巻モノが発売になったので、そちらを紹介したいと思います。 さて、これが期間内だったら何位なのか......という野暮な話は脇に置きましょう。

森田るい「我らコンタクティ」

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ざっくり内容を説明すると、

町工場で1人でロケットを作っている青年の話

です。 そんでもって、そのロケットを飛ばそうとする理由がぶっ飛んでいてワクワクします。
人類の役に立ちたい、とか、技術力を証明してやる、とかではないんです。

子供の頃に見た映画が面白かったから、昔見たUFOに乗っている宇宙人にも見せたい

です。 子供の発想です。
映画を見たのも子供の頃。UFOを見たのも子供の頃。
ロケットを作ってる青年・かずきは、その子供の頃の思いを大人になっても持ち続けて、しかも現実にしようとしています。

話の視点は、ロケット作りの知識のないOL・カナエです。
かずき青年のロケット作りに巻き込まれるのは、子供の頃、彼と一緒にUFOを見たから。
それ以上でもそれ以下でもなく、ゆえにロケット作りに特段の興味はありません。むしろ興味があるのは金儲け。

でも、次第にかずき青年の熱に引き込まれるようにロケット打ち上げに協力していきます。
ここらへん、実に読者の心理ともシンクロしていて、ぐいぐい物語に引き込まれます。

この話は前述したように全1巻で、なので、非常に話のテンポがいいです。
ところが、かずき青年の話のテンポは対照的に無茶苦茶悪い。
伝えようとする意思があまりありません。
ロケットを打ち上げる動機を説明するのも、こんな感じ。

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それだけの説明に5ページもかけるのかよ!

技術的な話は、視点役のカナエにも知識がないためかざっくりとした感じ。
なので、物語は打ち上げに至るまでの人間的・環境的な問題の乗り越えが主になります。

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目的が目的だし、かずきも上記な感じなので、説得ができるわけがない。
そんな状況で、さて、打ち上げは果たしてどうなるのか??

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全1巻に科学や夢、いろんなワクワクが詰まったこの作品、オススメです。

作者の森田るいという方は、2013年に「マキと渡とすげぇキモチ悪い虫」という、すげぇ印象的なタイトルの短編で講談社の四季賞を受賞しています。

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これがまた非常によい短編。 一言で内容を説明すると「シュレーディンガーの携帯電話」。
その後もいくつか短編を発表しているので、講談社さんには是非森田るい短編集を発行して欲しいところです。楽しみにしていますよ!

グランドカオス 山本

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