ガイウス・ユリウス・カエサルを描く!内水融「アグリッパ」

私事ですが、半年くらい前からアプリゲームのFate/Grand Order(以下、FGO)を始めました。


自分は歴史ではローマ史が好きなのですが、TYPE-MOON作品では正直ローマ帝国の扱いはあまりよろしくない。
FGOでは皇帝ネロが出てくるくらいで、スキピオ・アフリカヌスもスッラもポンペイウスも、カエサルやアウグストゥス、ティベリウス、五賢帝時代のトライアヌスやハドリアヌス、大帝コンスタンティヌス(以下略)なども出てこない、と言ってると、

すでにFGOをやってる友人「カエサル出てるよ」
自分「よし、始めよう」


となりました(チョロい)。


わーい、カエサルどんな強キャラかな......

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!?




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間違いなく、ユリウス・カエサルって書いてるよ。


完全に想定外でした(でも最終再臨まで育てました)。

ゲーム中でもカエサル本人が「だからといって私を前線に置くべきではなかろう」と言ってますが、いつか追加シナリオで"総司令官(インペラトール)"カエサルが出ることを心待ちにしています。

前置きが長くなりました。
日本でユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)というと、たしかに歴史の教科書やシェイクスピアの戯曲では出てきますが、娯楽作品となるとなかなか見かけない。
しかしその生涯は波乱に満ちています。北はブリタニアから、西はエジプトまで、転戦した地方が桁違いに広い。私生活のほうでも、「他人の金で革命を成し遂げた」ほどの天文学的な借金や、「元老院議員の半分は妻をカエサルに寝取られた」と称される女ったらしっぷりなど、人間的と言ってしまえばこれほど人間的な男もいないといった感じ。

そんなカエサルを扱った最近の漫画として、本日は内水融「アグリッパ」を紹介したいと思います。

内水融「アグリッパ」全4巻

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ネタバレに関しては、歴史的事実(戦争の勝敗の結果とか)に関してはOKという感じで紹介させていただきます。

さて。

当初、この漫画が出たとき、自分はてっきり初代ローマ皇帝アウグストゥスの話かと思いました。
アグリッパというのは、皇帝アウグストゥスの右腕として活躍した武人の名前であるからです。

ところが、この漫画はガリア戦役6年目から始まります。

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それもガリア側の物語として、です。

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「ガリア戦役」というのは、ユリウス・カエサルが8年かけて行った戦争の通称であり、この戦争でガリア地方(フランス、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ南部、ドイツ西部、スイスを含む西ヨーロッパ一帯)を平定してローマの支配地域を北はドーヴァー海峡、東はライン河にまで広げることになります。
その戦争をガリア側から描くということで、これは破滅への物語となります。

ガリア人には部族ごとの群雄割拠の性向があり、カエサル相手にもまとまることを知らない状況でした。
ローマ軍は連戦連勝、6年がかりでほぼガリアを平定したかに思えるまでになっていました。

ところがガリア戦役の6年目も終わりの冬、前首領アッコが処刑されたカルヌテス族の動乱がきっかけとなって、平定されたかと思われたガリア部族が一斉に蜂起するのです。

物語は、そのカルヌテス族のアッコの息子、タラニスの視点で語られます。

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そして、カエサルの敵となる存在が、単なる一部族の反乱であった蜂起をまとめ上げ、ガリア全土の蜂起へと持って行った人物、ヴェルチン・ジェトリクス

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ユリウス・カエサルが作中本格的に出てくるのは2巻になってから。

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もちろん太ってません。
偉丈夫で、額の生え際の後退著しいという(本人かなり気にしていたらしい)史実に近い造形です。

地の利はガリア側にあれど、戦争上手は圧倒的にローマ側に軍配が上がります。

そんな強敵カエサルに対して、ヴェルチン・ジェトリクスは群雄割拠状態の味方をまとめるのに厳罰主義をもって行います。

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さらには、兵糧に難のあるローマ軍を消耗させるために焦土化作戦まで決行します。

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しかしガリアの敵はローマのみにあらず。身内のゴタゴタもあり、またカエサルの手腕もあり、焦土化作戦も失敗に帰すも......

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「負けて増々威信を高めた」ヴェルチンは、カエサルをゲルゴヴィアに誘い出すことに成功します。

そして、ゲルゴヴィアの地で、ヴェルチン・ジェトリクスはついにカエサルを退却させます。

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敵地で、兵糧も少なく、さらに敗軍となったローマ軍。
しかし、それでも野戦となるとガリア軍はカエサルには勝てない。追撃したガリア軍はローマ軍に敗れてしまいます。

次の決戦の地となったのはアレシア。
アレシアに籠もった8万のガリア軍をローマ軍5万で包囲するという無謀な形での戦い。
さらに、外のガリア軍も呼応し、内外34万のガリア軍対5万のローマ軍という、

何それ?

という異様な包囲戦が繰り広げられます。

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これに勝ってしまうのだから、カエサルの尋常じゃない指揮っぷりが伺えます。

そしてこのアレシアの攻防戦の終了をもって「アグリッパ」は終了してしまいます。

ブログでは主に史実に沿った戦争の粗筋を紹介しましたが、漫画はタラニスの視点から、ガリアの内紛をヴェルチンがいかにしてまとめたかといった話や、カエサルの思い描く未来像など、様々に漫画としての肉付けがされています。そこらへんは是非読んで欲しいところです。

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あとがきで「アグリッパ・ローマ編」も機会があれば、と書いていたので、本来はここからがメインの物語であったはず。

歴史的には、この後、

「賽は投げられた」

という言葉で有名な、ルビコン河越えから始まる内乱時代、クレオパトラで有名なエジプト内乱に巻き込まれる時代、「来た、見た、勝った」の言葉で有名なポントスの王ファルナケスとの戦い、と経て、カエサルは暗殺されることになります。

そして、多分「アグリッパ・ローマ編」はこのカエサル暗殺の後、遺言状にて後継者に指名された「オクタヴィウス」とその友人として「アグリッパ」が、二人三脚でカエサル暗殺の実行犯ブルータスらとの内乱や、カエサルの後継者を自認するアントニウスとの政争を戦い抜いていく様が描かれる予定だったと思われます。

ここらへんの流れは歴史の教科書の数行で終わらせるのはもったいないくらいドラマチックなので、興味を持たれた方は是非いろんな本にあたって欲しいと思います。
「アグリッパ・ローマ編」にも、もちろん期待して待ってます。

内水融作品の通販ページはこちらから→https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?keyword=%E5%86%85%E6%B0%B4%E8%9E%8D&categoryCode=11&shop=55&soldOut=0

グランドカオス 山本

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