漫画雑誌に掲載される短編。
その多くはコミックに収録されることもなく、読者の話題に出ることも少なく、消えていきます。
読者も、なかなかひとつひとつの短編を覚えておくことはありません。
しかし、中にはわずか数分の読書体験で強烈な印象を残し、人に薦めたくなる短編というものもあります。
以下に紹介する百名哲「Tig****はWEB上から消えた」はそんな作品のひとつ。
去年(2015年)読んだ中で飛び抜けて面白かったのですが、あまり話題になることもなく現在に至るので、この機会を利用して紹介したいと思います。
掲載は「ハルタ」24号。奥付では2015年5月27日発行。作者は百名哲(ももな・さとる)。
「執着にはドラマがある」
これは「執着」の物語です。
【※以下、中盤までのネタバレ含みます。ご容赦ください】
あらすじを簡単に説明します。
作家・百野哲はお金に困りエロビデオをネットオークションで売ることにします。
他人任せにしてしまったために、お気に入りの女優ものが1本紛れこんでいたことに気付かずにいます。
その1本に、妙なプレミアがついている。
どうやら、ただ一人の人が黙々と落札を続けているらしい。そのIDの履歴を見ると、落札されたものはすべてそのAVなのだ。
どんな人物なのだろう。作家・百野は想像します。そして興味を惹かれます。
ただひたすらに一本のAVを収集し続ける人物とは、どのような人なのだろう。
転機は、同級生がそのAVを持っていたこと。
作家・百野は千載一遇のチャンスと、オークションにあげ、その人物が落札に訪れるのを待ちます。
交渉はすんなりとまとまり、その人物は取材に応じてくれることになりました。
そして「執着」の理由を聞く。
「就職したばかりの頃、自慰もしたことがないという自分に寮長が『勉強せい』と渡したAV」
「最初からずーっと彼女だけでした。世界には私と彼女しかいなかったといっていい」
「彼女のビデオが1本しかないか考えたことはありますか」
「彼女はおそらくビデオに出たことを良くは思っていない」
だから、彼女のビデオを探し集め、焼却しているという。
「好きな女性の望まぬビデオが他の人のものになっている。我慢ならないことだと思いませんか?」
物静かな語りだけに余計に迫真性を持つ。
そして、去り際の彼の言葉に、物語は急転する。
そう、これは「執着」の物語であり、「愛」の物語なのです。
まんだらけの社員やお客さんは少なからず「オタク」で、ゆえに「執着」もそれぞれにあると思います。
「執着」がある人ほど、この短編は面白く、心に響くものがあると思います。
今月(2016年5月)発売の「ハルタ」34号に、百名哲のモキュメンタリー第2弾が
載っています。そちらもどうぞ。
(うめだ店/山本浩平)
===================================
百名哲の作品はこちら→https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=00&keyword=%E7%99%BE%E5%90%8D%E5%93%B2&shop=55&soldOut=0
グランドカオス 山本
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